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この記事の概要
森:睡眠にはさまざまな役割があります。その中でも「体のメンテナンス」「メンタルバランスの調整」「頭の中の整理」「免疫力の維持」の4つが特に重要とされています。
※日本睡眠科学研究所の資料を元に作成
体のメンテナンスには成長ホルモンが不可欠です。成長ホルモンは睡眠の前半に多く分泌される物質で、身体の機能の修復、疲労回復、新陳代謝を促し、健康や美容のもととなります。成長ホルモンと聞くと子供に必要なものと思われがちですが、大人にも欠かせません。30歳以降には急激に分泌が減るので、良質な睡眠によってできるだけ多くの成長ホルモンを分泌させることが大切です。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。レム睡眠の間は、感情をつかさどる脳の扁桃(へんとう)体の活動が活発になり、日中のストレスを和らげるといったメンタルバランスを調整します。
また、睡眠時にはレム睡眠とノンレム睡眠がセットで繰り返され、覚醒時に取り込んだ脳の中の情報を整理しているといわれています。睡眠不足は日中に眠気を催すだけでなく、情報が整理できないことで集中力や注意力の低下につながってしまうのです。
免疫力の維持・増強も大切なポイントです。睡眠時は副交感神経が優位になり、免疫に関わるリンパ球が多くなるほか、抗酸化作用があるメラトニンという睡眠ホルモンが分泌されます。良質な睡眠は免疫力を高め、病気になりにくい体をつくります。
森:1日の過ごし方からご説明しましょう。まず、朝起きたら太陽の光を浴びる習慣をつけてください。夜勤の方などは照明の光でも構いません。人間は光を浴びるとセロトニンの分泌が始まります。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料で、約15時間後にメラトニンに変わります。朝のうちにしっかり光を浴びることが、眠る準備につながっているのです。
人の体内時計は、モーニングクロックとイブニングクロックの2つが備わっていると言われています。お昼過ぎの12時から15時頃になると眠くなるという方が多いのですが、モーニングクロックが終盤に差しかかるこの時間帯に眠くなるのは、体のリズムとして自然なことです。可能であれば、15~30分の昼寝をお薦めします。
夕食や飲酒は、なるべく就寝の2~3時間前に済ませましょう。寝る直前に食事をすると睡眠中に消化活動が活発になります。すると脳や体が働いている状態となり、眠りが浅くなってしまいます。寝酒も睡眠の質の低下につながります。お酒は眠気を誘いますが、覚醒作用もあり、夜中に目覚めてしまうことが多いのです。尿意で目が覚めてしまうこともあります。
良質な睡眠のためのもう1つのポイントは、身体を温めることです。寝る1時間ぐらい前にお風呂でぬるめのお湯にゆっくりつかって、身体の深部体温を上げましょう。人間は体温が下がると眠くなるので、お風呂上がりの放熱で心地よい入眠が期待できます。
森:ここでもいくつかのポイントがあります。西川の日本睡眠科学研究所では、5つのポイントを挙げています。「温度・湿度」「音」「光」「香り」「色彩」です。
睡眠に適した「温度・湿度」は、冬は10℃以上、夏は28℃以下が目安で、湿度は50%程度が理想的とされています。温度を気にする方は多いのですが、湿度はあまり意識されていないようです。夏の寝苦しさは湿度と密接に関係しますし、人間は寝ている間にコップ約1杯分の汗をかくので、湿度は大切な要素なのです。熱帯夜が多い夏の間は、適切な温度に設定した上でエアコンをつけたまま寝ても大丈夫です。扇風機も効果的です。ただし、エアコンも扇風機も身体に直接風が当たらないように気をつけてください。
寝室の「音」は、40dB(デシベル)以下にしましょう。これは図書館で本をパラパラとめくる音が聞こえる程度の静かさです。道路など外部の音が侵入しやすい寝室は、雨戸や二重サッシ、厚手のカーテンなどで音を遮るといいでしょう。入眠時に音楽をかけるならば、歌詞のないヒーリングミュージックや環境音がお薦めです。歌詞があると脳が覚醒してしまう可能性があるためです。
「光」については、理想を言えば真っ暗がいいのですが、それが難しければ0.3~1.0ルクス程度の明るさにしましょう。これは手元がぼんやり見える程度の暗さです。間接照明などを使う場合は、光源が目に入らないように気をつけてください。
「香り」は、寝る前と起床時の両方で効果をもたらします。寝る前はリラックスできる香り(ラベンダーやローズ、カモミールなど)、起床時はリフレッシュできるすっきりした香り(レモンや、グレープフルーツ、ペパーミント、ユーカリなど)がいいでしょう。
「色彩」は、ベージュ系やブラウン系といった落ち着いた色がいいのですが、ご自身が落ち着く色を基調に、お気に入りの寝室を作ることが大事なポイントです。北欧テイストのカラフルでポップな色彩でも、落ち着きが得られるならば選んで良いと思います。
森:寝具によって体の周囲につくられる寝床内環境は、快適な睡眠を得るための最も大切な条件の1つですので、寝具はご自身の身体に合ったものを選んでください。
敷きふとんには体圧分散と寝姿勢保持の役割が求められます。体圧分散については、体圧がある部分に集中せず、敷きふとんの全体で身体を支えるようなものが理想です。
人はまっすぐに立っている時、背骨がなだらかなS字を描いています。寝ている時もこれに近い姿勢を保つこと(=寝姿勢保持)が、体にかかる負担を軽減するポイントです。敷きふとんが柔らかすぎると腰が沈み込んで体が「くの字」になってしまいますし、硬すぎるふとんは背中との間に隙間ができてしまいます。
お薦めは、全身に添うウレタン製の敷きふとんです。点で支えるタイプが体圧分散と寝姿勢保持に効果的です。ウレタン製の敷きふとんは、お手入れも簡単です。外干しする必要がなく、壁に立てかけておくだけで湿気を逃がすことができます。
森:理想的な枕は、仰向き寝でも横向き寝でも、首をしっかりと支えてくれるものです。一般的に、人は一晩に20~30回ほど寝返りを打ちます。仰向き寝の場合、枕は首の高さを支えられればいいのですが、横向き寝の場合は肩幅を支えなければなりません。起床時に首や肩が凝っていると感じている方は、中心が低く両端が高い構造で仰向き寝と横向き寝の両方に対応ができるようになっている機能の枕を試してみてください。
最近は抱き枕を利用なさる方も増えています。抱き枕は横向き寝の際、体の片側にかかる体圧を分散する効果があります。なにより好みの抱き枕があることで安心して眠れるのはいいと思います。
掛けふとんは吸放湿性がポイントです。人は夏も冬も寝ている間にコップ約1杯分の汗をかきますから、これを吸って吐き出してくれるふとんが理想です。冬は吸放湿性が高い羽毛布団をお薦めします。掛けふとんや毛布をたくさん重ねているという方がいらっしゃいますが、ふとんはたくさん重ねると重くなりますし、寝返りも打ちにくくなります。重いふとんをお使いで眠りに不安があるという方は、ぜひ軽くて温かいふとんをお試しください。夏場も羽毛の量が少ない肌掛けふとんや天然素材のタオルケットを使うといいでしょう。
森:人それぞれで身体に合う寝具が違いますし、寝返りの影響もあります。1つのベッドで寝ている場合、一緒に寝ている人が寝返りを打つだけで眠りが妨げられてしまう可能性もあります。睡眠のことだけを考えれば、ダブルサイズの寝具ではなく、シングルサイズを2つ使い、それぞれに合った寝具を使い分けるのが理想です。
一晩ぐっすり眠ると明るく前向きな気持ちになれます。ご自身に合った環境や寝具を上手く使って、良質な睡眠を十分にとり、健康な生活を送っていただきたいと思います。
森 優奈
2017年、西川入社。広報として業務に従事する傍ら、社内資格のスリープマスターを取得。睡眠科学や快眠環境などの専門講習を受けた“眠りのプロフェッショナル”として、お客様に快適な眠りのための環境の整え方や寝具選びを提案している。
※スリープマスターとは
西川・日本睡眠科学研究所認定の資格取得者。眠りのメカニズムや、寝具についての知識を保有し、快適な睡眠環境づくりのアドバイスを行う。西川公式サイトでのレクチャーや各種セミナーのほか、テレビ・ラジオ・雑誌など多方面のメディアで幅広く活躍する。
日経BPコンサルティング
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